鍼灸師の将来性は?業界の現状や売れっ子鍼灸師の条件について解説
(画像=kattyan/stock.adobe.com)

はりときゅうを用いて患者様の治療にあたる鍼灸師は、1度免許を取得すれば長く活躍できる国家資格です。開業のチャンスもある鍼灸師は魅力的な職業といえますが、本当に将来性のある職業なのか気になる方もいるでしょう。業界の現状や「売れっ子」鍼灸師になるための条件などについて解説します。

目次

  1. 従来の働き場所だけでは将来への不安も見える、鍼灸師の仕事
  2. 鍼灸院・鍼灸整骨院以外にも活躍の場所が広がる現代の鍼灸師の世界
  3. 海外でも認められる鍼灸のチカラ
  4. 長く活躍し続けるための新しい鍼灸師のスタイルとは
  5. キャリアアップも狙えるダブルライセンスはなにがおすすめ?
  6. まとめ:鍼灸師はより専門性の高いスキルアップを目指すことで、将来の展望が開ける

従来の働き場所だけでは将来への不安も見える、鍼灸師の仕事

鍼灸師である以上、まずは目の前の患者様に向き合い、治療に全力を尽くすのは当然のことです。その過程でさまざまなスキルや経験をアップさせ、治療家として高いレベルに上り詰め、より患者様に貢献することを考える必要があります。鍼灸師というスペシャリストとして活躍することを目指すうえで、どのような患者様でも治す、といった気持ちや日々の鍛錬が必要なのはいうまでもありません。

そのような、勤め先の鍼灸院などで十分なキャリアを積んだ鍼灸師が選択する道の一つは、「個人で開業する」ことでした。地域の人たちの体の不調や痛みを取り除くために、自身の経験やスキルを発揮することで患者様に貢献できる鍼灸院を開業するというのは、鍼灸師にとって一般的な選択といえます。

近年は鍼灸院・鍼灸整骨院が、大幅に増えています。競合となる施設が増えると、限られた患者を多くの院で取り合う現象が起きることになります。

▽はり・きゅう施術院数の推移

はり・きゅう施術院数の推移
(画像=はり・きゅう施術院数の推移)

参照:厚生労働省「平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」より編集部作成

これから鍼灸院を開業しようと思っても、競合が多く思ったように利益を伸ばせない可能性があります。今後鍼灸師を目指す学生さんは、「鍼灸院に勤める」「いずれ鍼灸院・鍼灸整骨院を開業する」という従来通りの働き方にとらわれず、新しい道を模索する必要があるといえそうです。

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鍼灸院・鍼灸整骨院以外にも活躍の場所が広がる現代の鍼灸師の世界

鍼灸師の職場は、地域の鍼灸院に勤めたり、独立して自分の院を持ったりするのが一般的でしたが、最近では鍼灸院だけでなく、さまざまな場所で鍼灸師のニーズが増えています。たとえば、近年では、高齢化に伴い介護の現場や医療施設でも鍼灸師を求める声が増加しているといいます。今後はどのような場所で鍼灸師の需要が高まるのか、広がる鍼灸師の活躍の場について見ていきましょう。

広がる鍼灸師の活躍の場1:老人保健施設や有料介護老人ホーム

近年鍼灸師のニーズが急増しているのが、介護施設です。高齢者の体のケアを行える、鍼灸師の求人を出している施設は多くあります。はりやきゅうは高齢者の体に負担をかけずに施術を行えること、またはりやきゅうに慣れ親しんでいる方が多いことがその理由のようです。

老人ホームだけでなく、デイサービスや訪問介護、高齢者向けのリハビリステーションでも鍼灸師が求められています。

広がる鍼灸師の活躍の場2:医療施設でのリハビリ・訪問リハビリ

鍼灸師の活躍の場は、医療施設にまで広がっています。多くの場合、リハビリ科で施術や機能回復訓練業務にあたります。

医療施設での鍼灸師は、医師の指示に従って患者の治療を行います。はりやきゅうは、薬を使わずに痛みを緩和させるとして現代医療でも注目集めている治療方法です。

鍼灸師の国家資格を持つ人は、半年間の実務経験を経れば機能訓練指導員として働けます。鍼灸師の知見を持つ機能訓練指導員は、幅広い知識と経験から、多くの患者を回復に導く存在となれるでしょう。

広がる鍼灸師の活躍の場3:プロにも人気のスポーツ鍼灸

スポーツ選手のパートナーとして、ケガの予防から治療まで行うのがスポーツ鍼灸です。プロの選手だけでなく、スポーツを趣味にしているアマチュアプレーヤーのサポートも行います。

肩、腰、膝などの痛みを取り除くほか、試合に向けてのコンディションを整える役割も担います。鍼灸に加え、テーピングやマッサージによって選手の体をトータルで支えています。

広がる鍼灸師の活躍の場4:女性に人気の美容鍼

鍼灸師の資格を美容に活かす「美容鍼」(びようしん)も人気です。女性向けの高級サロンのような空間で、顔や頭に鍼を施します。多くの有名人も美容鍼を行っていることもあり、一般からも注目されている美容法です。

美容鍼では、女性の鍼灸師がサロンを開設し施術にあたることが多いようです。はり以外にもアロマセラピストなどの資格を取得すれば、幅広い層にアプローチできる人気のサロンになるかもしれません。

海外でも認められる鍼灸のチカラ

さらに近年では、鍼灸師に持つスキルに海外からも注目が集まっています。米国国立衛生研究所によって、鍼灸が「脳卒中の後遺症や自律神経失調症、高血圧、リウマチなどさまざまな疾患に有効」と認めたためです。

▽NIH(米国国立衛生研究所)が発表した鍼灸療法が有効な病名・症状の例

病名・症状
神経系疾患 脳卒中後遺症、自律神経失調症など
運動器系疾患 関節痛、リウマチ、頸椎捻挫後遺症、五十肩、腱鞘炎など
循環器系疾患 心臓神経症、動脈硬化症、高血圧、低血圧
婦人科系疾患 更年期障害、乳腺炎、生理痛、月経不順
代謝内分泌系疾患 バセドウ病、糖尿病、痛風、貧血
耳鼻咽喉科系疾患 中耳炎、難聴、メニエール病、咽喉頭炎
眼科系疾患 眼精疲労、仮性近視、疲れ目、かすみ目

参照:鍼灸の適応症|公益社団法人 日本鍼灸師会

日本では古くから親しまれていた、はりやきゅうに、このような効果があることは国内でもあまり知られていないのが実際です。しかし今後は、これらのデータによって、はりやきゅうといった東洋医学が国内でも見直されていくことでしょう。

さらに、世界保健機構(WHO)が漢方とともに鍼灸を日本の伝統医療として認めました。漢方や鍼灸の由来は中国ですが、日本に輸入された後に国内で独自の発展を遂げたことがその理由です。

日本式の鍼灸は、中国の鍼灸と異なる特徴を持ちます。中国では、日本ではあまり見かけないボールペン程度の太さの鍼を用いています。日本では髪の毛程度の太さの鍼を使用するのが一般的です。

また、中国では鍼灸が医療として進化・発展していますが、日本では医療の補助や、西洋医学を補完したり代替したりする医療として考えられています。なお、そのため日本では一部の疾患に対する診療にしか、保険が適用されません。

長く活躍し続けるための新しい鍼灸師のスタイルとは

これから長く鍼灸師として活躍したいのなら、従来通りの働き方に加えて、新しい道を模索することも大切になってきます。鍼灸師の数は毎年増えています。「数多くいる鍼灸師のなかから自分を選んでもらう」ためには、患者の期待に応えられる鍼灸師を目指すことが大切です。

人気の鍼灸師になるために、競合との差別化を図る方法を探してみましょう。

長く活躍し続けるための新しい鍼灸師のスタイル1:特定の分野のスペシャリストになる

ほかの鍼灸師と一線を画す、特定の分野のスペシャリストを目指す方法があります。前述したスポーツや美容分野で活躍する方法も1つの手です。特定の分野で専門性を磨き、鍼灸師以外の資格やスキルを習得できれば、自分にしかできないサービスを開発できるかもしれません。

これまでの経験や興味のある分野を探ってみると、目指したい分野が見えてくるでしょう。学生のころからバスケットボールをしているので、バスケットボールに強いスポーツ鍼灸を目指す、スキンケアに興味があるので、スキンケアに特化した美容鍼をサービスにするなどの方法です。

最近では、鍼灸・整骨院を併設するスポーツジムも増えています。将来的に経営者になって、大きく経営していきたいのなら「スポーツジム+鍼灸院」のスタイルで店舗を構える方法もあるでしょう。

長く活躍し続けるための新しい鍼灸師のスタイル2:海外で活躍する鍼灸師になる

海外で活躍する鍼灸師を目指す方法もあります。日本よりもなじみがない分、競合が少なく、注目されれば有名な鍼灸師になれる可能性があります。

ただし、海外で鍼灸院を開設しようと思っても、日本の国家資格では認められないことがある点に注意が必要です。

たとえば、アメリカでは州によって法律が異なります。アメリカで鍼灸師として活躍したい方は、どの州なら鍼灸師の資格が取れるのか、鍼灸院を開けるのか事前に調べておかなければなりません。アメリカ国内で鍼灸師として活躍したいのなら、アメリカの鍼灸学校に通うのも手でしょう。

将来的には海外で鍼灸院を開きたいと考えるのなら、英語や中国語を学ぶことをおすすめします。海外の学校に通うためには、語学が欠かせません。

長く活躍し続けるための新しい鍼灸師のスタイル3:高齢者のリハビリに特化した鍼灸師になる

前述したように、高齢者向けの鍼灸治療の需要は増すばかりです。高齢者のリハビリに特化した鍼灸師になれば、引く手あまたの鍼灸師になれる可能性もあります。

高齢者の多くは、加齢によって体のさまざまな箇所に不調を感じています。

関節痛や急な転倒による骨折、骨折の後遺症、病気の後遺症に悩む方も少なくありません。高齢者に貢献できるリハビリ特化の鍼灸師は、今後さらに活躍の場を広げていくのではないでしょうか。

キャリアアップも狙えるダブルライセンスはなにがおすすめ?

鍼灸師は今後さまざまな場所で活躍できる可能性が高い、将来性のある職業であることがわかりました。将来を考え資格を増やしたいのなら、学生のうちに鍼灸師とあわせて取得できる次の2つの資格がおすすめです。

なお、柔道整復師とあん摩マッサージ師の国家資格を鍼灸師国家資格と同じ年に受験することで、学費も抑えられます。

ダブルライセンス獲得のメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

ダブルライセンスのメリットは?柔道整復師と鍼灸師の2つの資格で就職の幅が広がる

鍼灸師と合わせて目指したいダブルライセンス1:柔道整復師

鍼灸師と同時に柔道整復師の国家資格を取得する学生は多くいます。柔道整復師は、スポーツ分野やリハビリ、捻挫や骨折などのケガの治療に対する知識と技術が豊富です。

鍼灸師は、はりときゅうを使って病気の予防や治療を行います。柔道整復師は、テーピングや手技を用いてケガの治療を行います。それぞれ用いる手法や道具が異なるため、2つのライセンスを取得しておけばより幅の広い治療が可能となります。

リハビリやスポーツ分野に特化することを考えている方は、柔道整復師とのダブルライセンスを検討してみましょう。

鍼灸師と合わせて目指したいダブルライセンス2:あん摩マッサージ指圧師

鍼灸師の国家資格を取得しただけでは、マッサージによる施術は行えません。あん摩マッサージ指圧師とのダブルライセンスで、マッサージによる治療も行ってほしいという患者のニーズに応えられます。介護施設でのリハビリや、訪問による治療・リハビリにも役立つでしょう。

まとめ:鍼灸師はより専門性の高いスキルアップを目指すことで、将来の展望が開ける

鍼灸師の仕事を真剣に考えている方にとっては、どのようなキャリアパスを描けるのか、もし開業したとしたら、その後も安定して働き続けられるのか、不安に感じる方もいることでしょう。しかし、近年では、鍼灸師をとりまく環境も変化しており、介護関連施設や美容面でも鍼灸師に対するニーズが高まっています。鍼灸院に勤めたり、鍼灸院を開業したりする以外にも、働き方、キャリアの積み上げ方も多様化しています。

これは、鍼灸師という資格を生かしながら、自分なりのさまざまなキャリアを目指せるということでもあります。従来の鍼灸師とは異なる働き方を模索し、専門性を持つことで、自分の理想にあった働き方を見つけられるかもしれません。

より多くの人を治療し、広く社会に貢献したいのなら、複数の資格を取得して治療の幅を広げましょう。

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