柔道整復師の離職率は高いって本当?その理由と資格を活かせる転職先
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国家資格である柔道整復師を目指している学生のなかで、「柔道整復師は離職率が高い」という噂が気になる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、柔道整復師の離職率の高さの真偽や離職の理由、転職状況などについて解説していきます。

目次

  1. 柔道整復師の離職率はどのくらい?
  2. 柔道整復師が離職する理由
  3. 柔道整復師の転職先にはどのような場所がある?
  4. 柔道整復師の転職は難しくない
  5. まとめ:柔道整復師の離職率の高さは事実ではない!転職理由もポジティブなものが多い!

柔道整復師の離職率はどのくらい?

就職するにあたり、自分の職業の離職率は気になるのではないでしょうか。それは柔道整復師を目指す学生にも同じことがいえます。厚生労働省が公表している令和元年の産業別入職者・離職者状況のデータによると、医療・福祉と広い分野における離職率は14.4%となっています。ただ、柔道整復師の離職率についての公式なデータはなく、正確な数値はわかりません。

医療・福祉分野の離職率は、全16分野のうち8番目となっています。そのため、医療・福祉分野そのものの離職率が極端に高いということではありません。

また、新規学卒就職者の3年以内の離職率(平成29年3月卒業者の状況)では、新規高卒就職者39.5%、新規大卒就職者32.8%となっています。このことからもわかる通り、どの業界や業種においても、新卒で就職した人のうち30~40%は3年以内に辞めているのが現状です。

ではなぜ、「柔道整復師は離職率が高い」ようなイメージが有るのでしょうか。次の項では、柔道整復師の離職理由を探っていきます。

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柔道整復師が離職する理由

柔道整復師で離職する人は、どのような理由なのでしょうか。柔道整復師が離職する理由は、ネガティブなものばかりではありません。それぞれ確認していきましょう。

柔道整復師が離職する理由1:ステップアップを目指す

柔道整復師は、独立開業を目指す人も多い職種です。独立開業するためには、ある程度の経験と資金が必要になります。

就職先の治療院でスキルを積んだのちに、自分で治療院を始める人が多いのも、柔道整復師の特徴の1つです。現在、治療院はたくさんあり、それぞれ特色も異なるため、独立開業する前にあえて転職していくつかの職場を経験しようと考えることもあるでしょう。1つの職場に長くとどまるのではなく、数年で退職しさまざまな治療院で経験を積もうとする人が多ければ、離職率としては高くなります。

この経験を積むためであれば、離職理由は決してネガティブなものではありません。そのため、離職率が高いイコール柔道整復師は職場環境が悪い、ということにはなりません。

また、柔道整復師として活躍している人のなかには、一定のスキルを取得したのちに自分の目指す働き方を叶えるため、資格を活かしてスポーツジムやスポーツチーム、介護施設などに転職する人もいます。

たとえば、スポーツインストラクターとして働きたい場合、経験者が優遇される傾向にあり、柔道整復師の資格を保有しているだけでは採用されないこともあります。そのため、現場経験を積むために国家資格取得後にまずは治療院に勤め、一定期間を経たらスポーツインストラクターへのステップアップを目指して転職することになります。

夢の実現に向けたキャリアアップですので、離職理由はポジティブといえます。

柔道整復師が離職する理由2:拘束時間が長い

治療院は営業している時間が長く、そのため柔道整復師の拘束時間も長くなる傾向にあります。治療院の多くは午前・午後に分けて営業していますが、スタッフは営業時間より前に出勤します。一方で受付時間が夜8時までなどとなっていても患者様の施術が終わり帰られるまで治療院は営業しています。その日の営業がすべて終わった後もカルテの処理や片付けなどがあり、すぐに帰宅できるわけではありません。

つまり、患者様がいない時間の仕事も多く、拘束時間は治療院の営業時間を上回ることになります。最近は夜遅くまで対応している病院や治療院も多く、その分拘束時間も長くなります。また、通院できない患者様がいる場合、診療時間外に往診して施術することもあるかもしれません。診療がある日には時間が確保しにくいため、スキルアップのための勉強会を休日に行う治療院もあります。

実際、令和3年6月の厚生労働省の月間実労働時間及び出勤日数の調査によると、全業種の1ヵ月における労働時間の平均は140.7時間です。しかしながら、令和2年に実施された厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見ると、柔道整復師の属する社会保険・社会福祉・介護事業の1ヵ月平均労働時間は163時間となっています。治療院によってはシフト制の導入などで1日の就業時間が長くならないよう工夫をこらしています。ただ、一朝一夕では改善されない業界全体の問題でもあり、拘束時間の長さが柔道整復師の離職の一因になっていることもあるようです。

柔道整復師が離職する理由3:平均年収の低さ

働く地域やスキル、役職にもよっても異なりますが、柔道整復師の平均年収は300~400万円といわれています。令和元年に公表された国税庁のデータによると、日本人全体の平均年収は436万円で、男女別で見ると男性が540万円、女性が296万円となっています。国家資格を持つ柔道整復師の平均年収は決して高いとはいえません。

複数の店舗を構えるようなグループ院と呼ばれる大きな治療院で働いている場合、店舗運営を任される立場になるなどして、年収がアップするかもしれません。しかし、個人経営のような小さな治療院では、年齢やスキルが上がっても思うような年収アップにつながらないこともあるでしょう。家族を養うなどの理由により、さらなる高収入を目指したいと考え、転職に至る柔道整復師も少なくないようです。

柔道整復師が離職する理由4:職場の人間関係

柔道整復師の多くが活躍する治療院は全国にたくさんあります。そのなかでは、個人経営や家族経営など、少ないスタッフで運営する形態も珍しくありません。そのため、職場環境は働く治療院により大きく異なります。また、スタッフの人数が少ない分、職場の人間関係の良し悪しが、働きやすさや職場の満足度に直結しやすくなるという側面もあるでしょう。

人間関係が上手くいかない職場で働き続けるのは難しいため、それが原因で転職に至るケースも少なくありません。

このように、柔道整復師は、独立開業やステップアップのために離職するケースも少なくありません。短期間で複数の治療院を渡り歩く、という言葉だけを捉えてしまうと、離職率が高いように映ります。しかし、決してネガティブな理由でない離職が多いことも頭に入れておきましょう。また、拘束時間や平均年収、人間関係を理由とした離職は、他業種においても起きうることであり、柔道整復師に限ったことではないでしょう。

柔道整復師の転職先にはどのような場所がある?

柔道整復師の転職先としては、どんな場所があるのでしょうか。柔道整復師の資格を活かせる転職先をご紹介します。

柔道整復師の転職先1:ほかの治療院

整骨院や接骨院といった治療院は、柔道整復師の代表的な働く場といえます。治療院は日本全国にたくさんあり、リラクゼーションメニューがある、スポーツに力を入れているなど、それぞれに特色があります。そのため、別の治療院への転職であっても、これまでと違う働き方ができることもあります。

以前働いていた治療院の労働環境が合わず、やむなく転職となった場合でも、他の環境ならより充実した働き方ができることもあるでしょう。ただし、同じ地域の治療院はつながりがあることも多いため、別の治療院への転職を検討するなら、穏便に退職しておくのがおすすめです。

柔道整復師の転職先2:整形外科クリニック

柔道整復師の働く先には、整形外科クリニックもあります。整形外科クリニックに勤務する柔道整復師は、医師の指示を受け、リハビリや整復補助、電気治療を行うのが主な仕事です。治療院にはない連携が大切になったり、治療院ではあまり見ない症例に出会ったりすることもあります。そのため、治療院とは異なる知識やスキルが得られることができるかもしれません。

柔道整復師の転職先3:スポーツジムやスポーツチーム

トレーニングの指導やコンディションのサポート、ケガの応急処置などを行うのが、スポーツトレーナーの仕事です。スポーツジムへの就職やスポーツチームとの契約により、スポーツトレーナーとして柔道整復師のスキルを活かすのも、1つの方法です。

最近は合理的なトレーニング方法を積極的に取り入れるケースが多く、スポーツトレーナーが注目を集めています。必須の資格はありませんが、体に触れる指導を行うため、多くのトレーナーが柔道整復師や鍼灸師などの資格を持っています。

ただし、プロスポーツチームのトレーナーへの転職となると、柔道整復師の資格を取得しているだけでなく、さまざまな民間の資格や実務経験が問われるケースも多いようです。

なお、プロスポーツチームなどのトレーナーは、個人事業主としてチームと業務委託契約を結ぶことがほとんどです。年ごとの契約などになるため、厳密にはスポーツチームへの「就職」とは異なります。

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柔道整復師の転職先4:介護福祉施設

最近、特に需要が高まっているのは、介護福祉施設への就職です。柔道整復師の資格を保有していることで、介護福祉施設で機能訓練指導員として勤務できます。病気やケガ、高齢などの理由で障害を抱えた利用者に、筋力や歩行などの訓練指導を行うのが、機能訓練指導員の仕事です。

万が一、骨折・脱臼・捻挫・打撲などのケガをした場合には応急処置もできる柔道整復師は、介護福祉施設でも活躍します。介護福祉士や看護師、理学療法士など、異なる分野のスタッフと関わる機会も多く、知識を広げることにもつながるでしょう。

柔道整復師の資格を保有し、かつ介護業界で5年以上の実務経験があればケアマネジャーを目指すなど、さらなるステップアップを図ることもできます。

柔道整復師の転職は難しくない

柔道整復師になったものの、転職が難しかったらどうしようと悩む人もいるかもしれません。しかし、柔道整復師の転職はそう難しくはありません。その理由について解説します。

柔道整復師の転職が難しくない理由1:治療院や整形外科は日本全国にある

厚生労働省が発表している平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、2008年には全国に34,839カ所だった治療院数は、2018年には50,077カ所と、10年の間におよそ1万5,000カ所も増加しています。治療院はもちろん整形外科も全国各地にあるため、地域によって求人倍率の差などはありつつも、柔道整復師として働く場所を探すことは、そう難しくないでしょう。

ケガの施術とリハビリの両方ができる柔道整復師の仕事は、高齢化社会が進む日本において今後も重宝される将来性のある仕事といえるのではないでしょうか。

柔道整復師の転職が難しくない理由2:柔道整復師資格を活かせる仕事の幅は広い

柔道整復師を必要としている施設も増加傾向にあり、柔道整復師の資格を活かした働き方の選択肢は広がっています。これまで、治療院で高齢者の機能回復や健康維持を担うケースが多かった柔道整復師の仕事ですが、現在自然治癒を引き出す手術を伴わない施術は、体への負担が少ないという点が、介護やスポーツなどの分野でも需要が高まっている理由です。

健康志向の高まりを背景に、一般のスポーツ施設も増加しています。特に、介護業界は、高齢化社会を背景に介護施設の需要も高まり、それに伴う人員不足が深刻です。介護福祉施設では、機能訓練指導員を1名以上配置することが義務付けられているため、柔道整復師の資格を保有する人材は重宝されるでしょう。

また、柔道整復師の資格が必須でない仕事であっても、体の構造やケガの種類といった専門知識は、その他の医療にかかわる現場でも役に立ちます。柔道整復師は患者様と1対1で接するため、仕事で身に付けた対応力が役立つ場面もあるでしょう。

柔道整復師の資格に加えて、カイロプラクティックや鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師などの資格を取得することで、仕事の選択肢を広げることもできるかもしれません。

まとめ:柔道整復師の離職率の高さは事実ではない!転職理由もポジティブなものが多い!

「柔道整復師の離職率の高さ」を証明する具体的なデータはなく、イメージによるもののようです。仕事の拘束時間の長さや平均年収の低さから「きつい」イメージが先行し、そのため「短期間で辞める人が多い」と捉えられているのかもしれません。

そして、柔道整復師の離職は、独立開業やステップアップという理由も多く、ネガティブなケースばかりではありません。柔道整復師の需要は分野を超えて広がっており、柔道整復師資格を活かした転職先も見つけやすい傾向にあります。つまり、柔道整復師の将来性は広がっている、と見ることができるのです。

柔道整復師を目指す学生のみなさんは、日々勉強に励んでいると思います。国家資格対策と合わせて、柔道整復師の実情や将来の展望にも目を向け、人生におけるキャリアパスについても、ぜひ考えてみましょう。

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