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柔道整復師として働いていく上で、「健康保険」について知っておくことは、働く自分にとっても施術を受ける患者さんにとっても大切なことです。健康保険がどのような仕組みなのか解説します。

目次

  1. 健康保険とは?制度の仕組みを解説
  2. 柔道整復師の施術に健康保険が使える?
    1. 保険が使えるケース
    2. 保険が使えないケース
  3. 健康保険を適用するときのポイント
    1. 負傷原因を正確に把握する
    2. 病院等で同じ負傷を治療中かどうか確認する
    3. 「療養費支給申請書」には患者さんのサインが必要
  4. 保険適用時の2つの取り扱い「償還払い」と「受領委任制度」
    1. 償還払いについて
    2. 受領委任制度について
  5. 患者さんのために健康保険の正確な取り扱い方を把握しておこう

健康保険とは?制度の仕組みを解説

まずは「健康保険」がどのような制度なのか、基本をおさえておきましょう。

健康保険は、病気やケガに見舞われたときに医療費の負担で困らずに済むよう、国が用意している制度です。そして、公的医療保険には主に5つの種類があります。「国民健康保険」「全国健康保険協会(協会けんぽ)」「組合健保」「共済組合」「後期高齢者医療制度」です。

その人の就業状況や年齢によって、加入する公的医療保険は異なり、医療費の自己負担割合も異なります。それぞれの違いを以下の表にまとめました。

▽公的医療保険の種類と加入対象者、医療費の自己負担割合

医療保険の種類 加入対象者 自己負担割合
国民健康保険 自営業者や非正規労働者、無職の人など 3割または2割
協会けんぽ 中小企業に勤める人とその家族 3割または2割
組合健保 大企業に勤める人とその家族 3割または2割
共済組合 公務員や私立学校に勤める教職員とその家族 3割または2割
後期高齢者医療制度 75歳以上の高齢者 1割または3割

いずれの健康保険でも、病院の窓口で保険証を提示すると、医療費の支払いを一定の自己負担だけで済ませることができます。また、「国民健康保険」「協会けんぽ」「組合健保」「共済組合」では、年齢や所得によって負担額が異なります。小学生から70歳未満は3割負担、乳幼児と70歳以上の人は2割負担ですが、70歳以上でも所得が一定金額以上の場合は3割負担となります。

自己負担の割合は基本的に「3割」ですが、年齢や収入によって決められているので、上記の「公的医療保険の種類と加入対象者、医療費の自己負担割合」と下記を参考に、健康保険の違いについて理解しましょう。

▽医療費の自己負担割合

厚生労働省「我が国の医療保険について」
(出典=厚生労働省「我が国の医療保険について」)

3割負担の人なら、もし1万円の医療費がかかっても、本人の支払いは3,000円だけです。病院での治療だけでなく、柔整の施術もこの負担分で済ませられる場合があります。健康保険が使えるのはどんな場合か詳しく見ていきましょう。

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柔道整復師の施術に健康保険が使える?

柔道整復師の施術代には、健康保険が使える場合と使えない場合があります。患者さんにとっては、健康保険が使えるかどうかで支払う金額がかなり変わってくるため、まずは一般的な基準を押さえておきましょう。

保険が使えるケース

柔道整復師の施術(整骨院や接骨院など)で健康保険が使えるのは、以下の負傷に対する施術をした場合です。

  • 骨折
  • 脱臼
  • 打撲
  • 捻挫
  • 肉離れ等の挫傷

「急性」かつ「外傷性」のケガだけと覚えておきましょう。

ただし、骨折や脱臼は施術することについて医師の同意を得る必要があります(※緊急時の応急処置を除く)。また、捻挫・打撲・挫傷で施術期間が3ヶ月を超える場合は、継続して治療が必要である理由書が必要になります。詳しい健康保険の手続き方法は後ほど解説します。

保険が使えないケース

逆に、保険が使えず、患者さんが施術代を全額負担する場合は以下の通りとなります。

  • 肩こりや筋肉疲労に対する施術
  • 日常生活や加齢が原因の痛み
  • マッサージ代わりの利用
  • スポーツによる筋肉痛
  • 過去の交通事故などの影響で起こる疼痛(後遺症)
  • 慢性病のリハビリ
  • リウマチや関節炎などの神経性疼痛
  • 症状の改善がみられない長期の施術
  • 労働災害や第三者行為(交通事故等)が原因の負傷
  • 柔道整復師の資格を持たないものによる施術
  • 保険医療機関(病院や診療所など)で同じ負傷等の治療をしているとき
  • 骨折や脱臼で医師の同意がないとき
  • 「家族の付き添いで来たついでに施術してもらった」「ついでにほかの部位も」などの「ついで受療」

こうして見ると、保険が適用できない施術は多数あることがわかります。

健康保険を適用するときのポイント

本当は健康保険が適用できないケースなのに誤って適用してしまうと、あとで患者さんが健康保険の運営者から全額負担分の費用を請求される事態になりかねません。健康保険を適用するとき、特に気を付けておきたい点が次のとおりです。

負傷原因を正確に把握する

柔道整復師の施術で健康保険が適用できるのは、「急性」かつ「外傷性」の負傷です。患者さんが訴える悩みの原因がそれに該当するのか必ず確認するようにしましょう。

また、負傷の原因が交通事故で第三者に傷付けられた場合や労働災害によるものの場合は、原因をつくった当事者が医療費を全額負担することになっているため、患者さんの負担はありません。この場合、健康保険は適用せず、労災保険や自動車損害賠償責任保険を適用することになります。

病院等で同じ負傷を治療中かどうか確認する

患者さんが「捻挫した」といって接骨院に来ても、その捻挫についてすでに病院や診療所で治療中の場合は、健康保険が適用できなくなります。また、病院以外では、鍼や灸も同じ疾病について両方で健康保険を適用することはできません。

「療養費支給申請書」には患者さんのサインが必要

健康保険を適用するには、専用の書類に患者さんの署名又は捺印をもらう必要があります。忘れたり、漏れたりしないようにしましょう。

また、領収書をお渡ししたり、求めに応じて金額の内訳などが載った明細書を発行したりすることも大切です。事務手続きを確実に済ませ、発行した書類は患者さんの方でも保管してもらうようお伝えしましょう。

保険適用時の2つの取り扱い「償還払い」と「受領委任制度」

健康保険を適用するには手続きが必要です。でも、その手続きは、誰がどこにどうやって行えばいいのでしょうか。

償還払いについて

柔道整復師の施術代は、健康保険では「療養費」として扱われます。療養費は、会計時はいったん患者側が全額負担し、あとで患者自身が健康保険に申請して7割分(※3割負担の方の場合)を支給してもらうのが基本です。これを償還払いと言います。

ただ、その場合は会計時の支払額が大きくなり、また、患者さんが自分で申請手続きをする手間も発生します。

これを解消するため、患者さんは柔道整復師に自己負担分だけ支払い、柔道整復師が患者さんの代わりに残りの費用を健康保険に請求するということが例外的に認められています。これを「受領委任」と言い、以下で詳しく説明します。

受領委任制度について

受領委任制度が利用できる接骨院や整骨院では、健康保険を利用する患者さんがそこで必要書類(療養費支給申請書)にサインをするだけで、会計時の支払額を一定の自己負担割合まで抑えることができます。

ただし、すべての柔道整復師が受領委任できるわけではなく、「社団法人所属柔道整復師」もしくは地方厚生局長と契約を結んだ「個人契約柔道整復師」などに限定されています。

<必要書類>

受領委任で健康保険を適用するためには、柔道整復師が「療養費支給申請書」という書類を作成する必要があります。

▽療養費支給申請書

厚生労働省 地方厚生局 上 厚生労働省 地方厚生局 下
(画像=厚生労働省 地方厚生局)

これに負傷原因、負傷名、施術した日や日数、金額など施術の詳細を記載して、患者さんに間違いがないか確認してもらい、「この内容で委任します」という証拠のためサインをもらいます。

白紙の療養費支給申請書にサインしてもらったり、負傷名を保険適用できるように変えて記載したりするのはNGです。

健康保険によっては、柔道整復師や患者さんに後日連絡して、施術日や内容を確認しているところもあります。施術した側と受けた側、申請した内容と確認した内容で違う点があると厄介で、場合によっては患者さんがまとめて費用の支払いを求められて困ることにもなりかねませんので、正確に記入しましょう。

また、柔道整復師(接骨院や整骨院)では領収書も無料で交付することが義務付けられています。領収書は「医療費控除」にも利用できます。医療費控除とは、1年間に負担した医療費の金額が大きい患者さんが確定申告をすることで、税金の負担を軽くできる仕組みのことです。

医療費控除は、自分で気付いて自分で申請しないと受けられないので、領収書を渡したときに医療費控除が使える可能性があることを教えてあげると親切かもしれません。

領収書だけでなく、場合によっては施術項目ごとに患者負担額を示した「明細書」や長期間や高頻度の施術が必要な理由や経過を記載した「理由書」などを求められることもあるため、発行できる状態にしておく必要があります。

<取り扱える保険の種類>

柔道整復師が受領委任で対応できるのは、健康保険だけではありません。労災保険、自動車損害賠償責任保険、生活保護の医療扶助なども取り扱えます。

・受託委任ができるようになるための手続き

先述のとおり、受領委任は誰でもできるわけではありません。できるようにするためには、「受領委任契約」が必要です。その方法はおもに2つあり、各都道府県の柔道整復師会か柔道接骨師会の社団法人の会員になる、もしくは個人的に地方厚生局、都道府県知事と契約を結ぶかです。現在、開業柔道整復師の場合は個別契約を選ぶ方が多いようです。

受託委任をスタートするには、以下のような書類を用意して地方厚生局に提出します。

<届出書類>

  • 確約書
  • 柔道整復施術療養費の受領委任の取扱に係る届け出・申し出
  • 柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る届け出・申し出(同意書)
  • 勤務形態確認票(複数管理又は複数勤務の場合)
  • 誓約書

<添付書類>

  • 施術所開設届又は変更届の写し
  • 免許証の写し(勤務柔整師を含む)
  • 欠格事由非該当者申出書
  • 施術管理者選任証明(施術管理者と開設者が異なる場合に必要)
  • 実務経験期間証明書の写し
  • 施術管理者研修修了証の写し

2018年4月から、柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いを管理する「施術管理者」になるためには、実務経験と研修の受講の両方が必要になっています。

患者さんのために健康保険の正確な取り扱い方を把握しておこう

施術代に健康保険が適用できるかどうかは、患者さんにとっては支払う金額が大きく変わる重要な問題です。正しく説明して正しく手続きできるよう、施術のスキルだけでなく、こうした知識も身に付けていきましょう。

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