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(画像=hikdaigaku86/stock.adobe.com)

鍼灸師として働く以上、施術の知識やスキル以外にもさまざまな知識が求められます。「健康保険」に関することも理解しておくべきことの一つです。施術の健康保険の適用範囲から保険請求の方法までを解説します。

目次

  1. 健康保険とは?制度の仕組みを解説
  2. はり・きゅう施術における公的医療保険の一般的な適用範囲
  3. 厚生労働省が公開しているはり・きゅう施術用の同意書
  4. 公的医療保険が適用されない自由診療となる施術
  5. 保険請求には「償還払い」と「受領委任払い」二つの仕組みがある
    1. 償還払い:患者側が鍼灸院に療養費の全額を支払い、あとで保険者に請求
    2. 受領委任払い:患者側が鍼灸院で自己負担分のみ支払い、鍼灸院が保険請求
  6. 鍼灸院が「受領委任払い」を取り扱う場合に必要なこと
  7. 保険の仕組みにもしっかりと答えられる鍼灸師になろう

健康保険とは?制度の仕組みを解説

そもそも健康保険とはどのような制度なのか、この機会におさらいしておきましょう。

日本では、全国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。そのため、「国民皆保険」と呼ばれています。そして、公的医療保険には主に5つの種類があります。「国民健康保険」「全国健康保険協会(協会けんぽ)」「組合健保」「共済組合」「後期高齢者医療制度」です。

その人の就業状況や年齢によって、加入する公的医療保険は異なり、医療費の自己負担割合も異なります。それぞれの違いを以下の表にまとめました。

▽<公的医療保険の種類と加入対象者、医療費の自己負担割合>

医療保険の種類 加入対象者 自己負担割合
国民健康保険 自営業者や非正規労働者、無職の人など 3割または2割
協会けんぽ 中小企業に勤める人とその家族 3割または2割
組合健保 大企業に勤める人とその家族 3割または2割
共済組合 公務員や私立学校に勤める教職員とその家族 3割または2割
後期高齢者医療制度 75歳以上の高齢者 1割または3割

「国民健康保険」「協会けんぽ」「組合健保」「共済組合」では、年齢や所得によって負担額が異なります。小学生から70歳未満は3割負担、乳幼児と70歳以上の人は2割負担ですが、70歳以上でも所得が一定金額以上の場合は3割負担となります。

75歳を超えると加入することになる「後期高齢者医療制度」では、原則として1割負担ですが、所得が一定金額以上の場合は3割負担となります。

また、子供の医療費に関しては、自治体によっては負担をゼロとしたり、軽減したりするケースもあります。

自己負担の割合は基本的に「3割」ですが、年齢や収入によって決められているので、前記した「公的医療保険の種類と加入対象者、医療費の自己負担割合」と下記を参考に保険の違いを理解しましょう。

▽医療費の自己負担割合

厚生労働省「我が国の医療保険について」
(出典:厚生労働省「我が国の医療保険について」)

はり・きゅう施術における公的医療保険の一般的な適用範囲

はり・きゅう施術は、「公的医療保険の適用範囲に含まれる施術」と、公的医療保険の適用範囲に含まれない「自由診療となる施術」に分類されます。自由診療の場合は、患者の治療費の負担額は10割となります。

公的医療保険の適用範囲に含まれる施術としては、以下6つの傷病のいずれかであることがまず求められます。

  • 神経痛:例えば坐骨神経痛など
  • リウマチ:慢性で各関節が腫れて痛むもの
  • 腰痛症:慢性の腰痛
  • 五十肩:肩の関節が痛く腕が挙がらないもの
  • 頚腕症候群:頚から肩、腕にかけてシビレ痛むもの
  • 頚椎捻挫後遺症:むち打ち症などの後遺症

※出典:公的社団法人「日本鍼灸師会

上記の傷病以外は原則として公的医療保険の適用範囲に含まれませんが、神経痛やリウマチなどと同一範疇と認められる慢性的な疼痛については、適用範囲として認められることがあります。

ただし、上記6つの傷病であっても公的医療保険を適用させるためには、もう1つ条件があります。それは、医師がはり・きゅうの施術に合意していることです。そして、この医師の合意を示すものが「同意書」や「診断書」となります。

患者側の視点から見ると、同意書を使う場合は鍼灸院で同意書をもらい、病院に持参して必要事項を記入してもらう流れとなります。診断書を使う場合は、病名や症状などとともに、治療が適当であることなどが記載されている必要があります。

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厚生労働省が公開しているはり・きゅう施術用の同意書

厚生労働省は、はり・きゅう施術用の同意書の雛形を公開していますので、その内容を紹介していきましょう。同意書における項目は以下の通りとなっています。

<患者>

  • 住所
  • 氏名
  • 生年月日

<病名>

  1. 神経痛
  2. リウマチ
  3. 頸腕症候群
  4. 五十肩
  5. 腰痛症
  6. 頸椎捻挫後遺症
  7. その他(      ) ※1~6は、当てはまるものに○をつけて下さい。7は、慢性的な疼痛を主訴とする疾病で鍼灸の施術に同意する病名を記載下さい。

<発病年月日> ・昭・平 ___年___月___日

<同意区分> ・初回の同意・再同意(○をつけて下さい) 

<診察日> ・平成 ___年___月___日

<注意事項等> ・施術に当たって注意すべき事項等があれば記載して下さい(任意)

上記同意書にあてはまる疾病であっても、医師が処置や投薬などの治療を行う場合は治療が優先されるため、鍼灸院での施術は健康保険の対象とはならないことがあるので注意が必要です。

また、医師から同意書が交付され、はり・きゅう施術を受けている場合でも施術が6ヶ月以上にわたる場合は再度、医師から同意書の交付を受ける必要があります。

公的医療保険が適用されない自由診療となる施術

患者の10割負担となる自由診療は、鍼灸治療において健康保険の適用にはならない慢性的な肩こりや内科疾患による腰痛などの症状に対する治療が対象となります。

治療院によって自由診療のメニューを独自に用意しているケースが多く、具体例としては以下のようなものが挙げられます。柔道整復師がいる治療院の場合は、柔道整復を含めた施術メニューが用意されているケースがほとんどです。

<自由診療となるメニュー・コースの具体例>

  • 指圧治療
  • 耳ツボ療法
  • 徒手矯正治療
  • 構造医学的治療
  • レインボー治療
  • ショートマッサージ(15分程度)
  • ロングマッサージ(30分以上)
  • 70歳以上が対象の健康ケア

保険請求には「償還払い」と「受領委任払い」二つの仕組みがある

公的医療保険の適用となるはり・きゅう施術の場合、療養費の保険請求には「償還払い」と「受領委任払い」という2つの方法があります。患者側からよく質問されることなので、鍼灸師としてしっかりと理解しておくようにしましょう。このパートでは患者側からの視点で保険請求について解説します。

償還払い:患者側が鍼灸院に療養費の全額を支払い、あとで保険者に請求

「償還払い」は、患者側が鍼灸院に療養費の全額を支払い、そのあとで自己負担分を除いた金額を保険者(健保組合など)に請求するという方法です。鍼灸院から領収書を受け取ったあと、患者側は1ヶ月ごとに療養費を保険者に請求します。

この場合は療養費支給申請書に記入し、医師の同意書や施術費用の領収書の原本、施術報告書の写しなども提出する必要があります。患者側から見ると、自己負担分以外もいったん立て替える形となる上、申請の手間もかかります。

受領委任払い:患者側が鍼灸院で自己負担分のみ支払い、鍼灸院が保険請求

一方、「受領委任払い」は、2019年1月1日から厚生労働省の通達によって正式に導入されたもので、患者側は自己負担分の金額のみを鍼灸院で支払い、鍼灸院が残りの金額を保険者に請求するという方法です。

この受領委任払いは、以前から保険者によっては導入されていましたが、厚生労働省の通達によって今後はより受領委任払いが一般的になっていくことが見込まれています。ただし、現時点では保険者によっては、受領委任払いの取り扱いをしていないケースもあります。

鍼灸院が「受領委任払い」を取り扱う場合に必要なこと

鍼灸院が受領委任払いを取り扱う場合、地方厚生局・地方厚生支局に対して届け出を行うことが必要になります。その場合の必要な様式と添付書類は、以下の通りとなっています。

<必要な様式一覧>

  • 確約書
  • 療養費の受領委任の取扱いに係る申出(施術所の申出)
  • 療養費の受領委任の取扱いに係る申出(同意書)※施術管理者以外の勤務する施術者がいる場合

<添付書類一覧>

  • 施術所開設届・変更届・出張業務の開始届の写し
  • 免許証の写し(勤務する施術者を含む)
  • 施術管理者選任等証明(個人開設用)※個人開設で施術管理者と開設者が異なる場合
  • 施術管理者選任等証明(法人開設用)※法人開設の場合
  • 勤務形態確認票 ※複数管理・複数勤務の場合
  • 住民票 ※施術管理者が出張専門施術者の場合
  • 施術管理者研修修了証の写し ※2021年1月1日以降の申出に限る
  • 実務経験期間証明書の写し ※2021年1月1日以降の申出に限る

受領委任払いに関しては、以下のケースなどでも新たに届け出が必要になるので、注意が必要です。詳しくは、各地方厚生局・地方厚生支局の公式ウェブサイトから確認できます。

たとえば、関東信越厚生局の場合は下記のページから確認することが可能です。

参考:関東信越厚生局

<新たに届出が必要なケース>

  • 施術所の名称・連絡先・標榜時間・地番等、又は開設者の名前・連絡先等が変更
  • 施術管理者の氏名が変更
  • 施術所を廃止するとき、受領委任の取扱いを辞退するとき
  • 勤務する施術者を追加するとき、勤務する施術者が氏名変更や退職するとき※施術管理者を除く
  • 施術所の開設者が変更
  • 受領委任の取扱いを行う業務(施術)の種類に変更があったとき ※施術管理者の変更や追加がない場合
  • 施術管理者が変更
  • 施術所の所在地が移転
  • 施術管理者(出張専門)の住所が変更 ※都道府県の変更がない場合
  • 施術管理者(出張専門施術者)が別の施術所で勤務するとき
  • 複数の施術所を管理する施術管理者について、勤務形態確認票による届出内容の変更があった場合

保険の仕組みにもしっかりと答えられる鍼灸師になろう

はり・きゅう施術において、施術者のスキルや知識は当然重要となりますが、患者側からの公的医療保険の適用範囲や支払いに関して質問されることもあるでしょう。

こうした点は制度化・ルール化されて明確になっていますので、この記事で解説した点についてしっかりと頭に入れておき、患者さんから質問されたことに答えられるようにしておきましょう。

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